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L/C取引について

L/Cについて

L/Cとは"Letter of Credit"のことで、日本語では「信用状」とも呼ばれます。国際間の貿易取引における商品代金の支払い確約書ということになります。今でも国際間の貿易取引の主な輸送方法は船です。船での輸送には時間がかかるため、商品の受け取りと代金の支払いには時間差ができてしまいます。そのため輸出者と輸入者のいずれかがリスクを負うことになります。例を出すと、商品の受け取り前に代金の支払いをする場合は輸入者が商品を受け取れないリスクが発生し、代金回収前に商品の出荷をする場合は輸出者が代金を回収できないリスクが発生します。こういったリスクを解消するために使われるのがL/Cです。

L/Cは輸入者の取引銀行(開設銀行といいます)が発行する書類で、輸出者が信用状条件に基づく書類を提示することで、輸入者に代わり、輸出者に対して代金の支払いを確約した保証状です。L/Cを利用することで、輸出者は代金の回収が確約され、輸入者は商品を確実に受け取ることができます。

L/C取引の基本的な流れ

  1. 輸出者と輸入者の間で売買契約を結びます。
  2. 契約においてL/C取引で合意された場合、輸入者は取引銀行に輸出者宛てのL/Cの発行を依頼します。
  3. 開設銀行は、開設依頼人から依頼された内容のL/Cを発行します。
  4. 発行されたL/Cは、開設銀行から輸出地の通知銀行を通して輸出者に送付されます。
  5. 輸出者はL/Cの内容に従った商品を船会社へ引き渡します。
  6. 船会社がB/L(船荷証券)を輸出者に発行します。
  7. 輸出者は買取銀行(通常は通知銀行と同じです)に対してB/Lを提示し、為替手形の振出し(手形の発行を振出しといいます)をします。
  8. 輸出者は為替手形の振出しを行うことで、買取銀行から商品代金を受け取ることができます。
  9. 買取銀行は船積書類からL/Cに記載された契約条件を満たしていることを確認し、荷為替手形(船積書類が添付された為替手形を荷為替手形といいます)を開設銀行へ送付します。
  10. 荷為替手形を受領した開設銀行は買取銀行に対して決済を行います。
  11. 輸入者は為替手形が渡った開設銀行に対して支払いを行い、B/Lなどの船積書類を入手します。
  12. 輸入者は船会社にB/Lを提示して商品を受け取ります。

L/C取引の2つの原則

L/C取引に関して、国際商業会議所(ICC)が「荷為替信用状取引規則および慣例(Uniform Customs and Practice for Documentary Credits: UCP)」という国際的ルールを制定しています。2007年に改訂されたICC出版番号600が最新版でUCP600と呼ばれています。UCP600では「独立抽象性の原則」「書類取引の原則」の2つの原則が明確化されました。

・独立抽象性の原則
L/Cは輸出者と輸入者の間に結ばれた売買契約をもとに発行されるものです。
ただし、いったんL/Cが発行されてしまうと、売買契約やそれに付随する各種契約などからは完全に独立します。
送られてきた商品が売買契約とは違うものであっても、提示された書類がL/Cに合ってさえいれば、
輸入者は為替手形が渡った開設銀行に対して代金の支払いをしなければなりません。

・書類取引の原則
L/C取引において、銀行は実際の貨物をチェックすること無く、書類の審査のみを行います。
銀行は書類の審査のみで取引を行いますので、書類の内容がL/Cに一致していることだけが、唯一絶対の条件となります。
したがって書類には厳密な正確さが求められます。

L/C取引のメリット・デメリット

L/Cを使った取引には次のようなメリットとデメリットがあります。

・メリット
前述の通り、L/Cを利用することで銀行が間に入ることになるので決済の安全性が高まることが最大のメリットとなります。輸出者はL/Cの条件通りに書類を提出すれば、輸入者からの代金の回収が確約されます。また、書類を提出さえすれば代金を回収できるということは、商品引き渡し後の代金回収を待つ必要もありません。輸入者としては、支払さえすれば商品の受け取りが確約されます。また、商品の代金を前払いする必要もありません。船積書類に記載された貨物の船積内容を確認後に支払うことができます。

・デメリット
L/Cの発行には手数料が必要となります。書類が銀行を経由しますので、直接やり取りを行った場合と比べ、輸入者が書類を受け取るタイミングが遅くなってしまうこともデメリットです。また、前述の「独立抽象性の原則」の通り、万が一、出荷された貨物が契約通りのものでない場合でも、L/Cに記載されている条件さえ満たされた書類の提示があれば代金の支払義務が生じてしまいます。

L/Cの種類

L/Cにはいくつかの種類があります。主に次のように分類されます。

・確認信用状と無確認信用状
一般的には無確認信用状が利用されています。ただし、カントリーリスク(ある国の世界基準で見た危険度のことです)が高い国への輸出の際には、確認信用状が利用されることがあります。確認信用状は、開設銀行以外の銀行(輸出国にある通知銀行となるケースが多いです)が「確認(Confirm)」を加えることにより、開設銀行の信用リスクを回避します。確認手数料が追加で必要になりますがL/Cの信用度は上がります。

・譲渡可能信用状
通常のL/Cでは、受益者(買取銀行から代金を受け取る者のことです)はL/Cに記載された者に限られます。ですが、輸入者の合意があれば「受益者がL/Cの金額の一部または全部を、一回に限り第三者に譲渡できる」というL/Cも開設できます。
こうしたL/Cを譲渡可能信用状(Transferable L/C)といいます。小さな輸出業者が現地の大手企業からの仕入を行う際に「信用力が足りないために仕入が行えない」といったケースなどで利用されます。輸入者の協力・承認のもと、現地の大手企業に対して「譲渡可能信用状」の譲渡を条件に仕入の交渉を行えます。

・回転信用状
通常のL/Cでは、売買契約1件ごとにL/Cの開設をする必要があります。同じ相手と同じ内容の取引を繰り返し行うような場合には、一定の期間内で繰り返し使えるL/Cを発行してもらうことができます。こうしたL/Cを回転信用状(Revolving L/C)といいます。回転信用状を発行してもらうためには、同額のL/Cが自動的に復元されるという文言を記載したり、L/C金額復元のタイミングを決める必要があります。都度L/Cを開設する時間と費用節減になります。

・Restricted L/CとOpen L/C
Restricted L/Cは、日本語では「買取銀行指定信用状」とも呼ばれます。信用状に基づく船積書類の買取を特定の銀行に限定する信用状のことです。逆にこの限定のないものを、Open L/Cといいます。信用状を発行する銀行にとっては、資金の決済や管理をするにあたって、買取銀行が限定されている方が都合が良いということが言えます。ただし輸出者にとっては馴染みの取引銀行と買取り手続きを行えなくなり不利になる可能性もあります。