関税とその基本目的
関税とは、外国から物品を輸入する際に、その物品に対して課せられる税金のことです。関税を課す目的は、主に2つあります。1つ目は財政収入のため、2つ目は国内産業の保護のためです。前者を主目的とする関税は「財政関税」または「収入関税」と呼ばれ、後者を主目的として競争輸入品に課せられる関税は「保護関税」と呼ばれています。
日本をはじめ多くの国は、後者の保護関税を主目的として関税を課しています。いずれにしても関税は、輸入する品物の内容に応じて、各国が自国の利益のために設定を行うのが基本となります。
GATTの誕生
関税は自国の利益のために各国が設定を行います。しかしその設定が、完全に各国の裁量のみによって行われる場合、世界経済全体の公正性が大きく損なわれる可能性があります。例えば1929年に起こった世界恐慌に際して、各国は関税の引き上げをはじめとする貿易制限措置を相次いで導入しました。その結果、世界貿易量は激減し、それによる不況の長期化が第二次世界大戦の遠因になったとも言われています。
そこで、世界経済の公平性のために、各国の関税設定の裁量を一部譲渡する形で、1947年に世界23か国の間で協定が調印されました。
この協定が、GATT(General Agreement on Tariffs and Trade)「関税と貿易に関する一般協定」です。
GATTの役割とWTOへの継承
GATTは、自由な国際貿易の促進を目的とする国際経済協定であり、関税その他の貿易障壁を取り除き,差別待遇の廃止を目指しました。協定が調印された1947年の加盟国数は23にとどまりましたが、徐々にその数は増えていき、1993年に合意に達したウルグアイ・ラウンドでは加盟国数が100を超えるようになりました。日本も1955年に加盟しています。
1995年、GATTはその役割を終え、新たに設立された国際機関によって協定が受け継がれました。この新たに設立された国際機関が、WTO(World Trade Organization)「世界貿易機関」です。WTOの基本姿勢はGATTと共通しており、自由な国際貿易の促進を目的としています。加えて、GATTではカバーされていなかったサービス貿易の自由化、貿易関連の知的財産権の保護もカバーするようになりました。
関税率表
具体的に各物品にどのくらいの関税がかかるのかについては、関税率表から確認することができます。関税率表は、物品ごとに割り当てられている「関税分類番号」と、関税分類番号に対応している「関税率」からなる一覧表です。また、各物品の関税分類方法は、各国が自国に有利になるような形で行ってしまうと、国家間での関税率交渉や協定税率が実質意味をなくしてしまいます。そのため関税分類は、世界税関機構が定めた「商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約」(通称、HS条約)によって厳密に策定されています。
日本において関税率表は、以下の税関のホームページに「実行関税率表」として最新版のものが掲載されています。
https://www.customs.go.jp/tariff/
関税率の形態
関税率表は、輸入されるすべての物品を分類して関税率を定めていますが、それらの関税率の形態は物品によって異なっています。特殊なものも含めるとその形態の種類は多岐にわたりますが、大きくは「従価税」と「従量税」の2つに大別することができます。従価税は、輸入品の価格に比例して関税負担がかかる関税率の形態です。日本では最も一般的な関税率の形態であり、インフレに対応できるなどの長所がありますが、適正価格の把握が困難であることなどの短所もあります。
一方、従量税は物品の個数、容積、重量などの数量を基準とする関税率の形態です。物品の価格が関税率に影響しないため、税額を容易に算定できる点が長所と言えますが、物価変動に際しては負担の不均衡が生ずる点が短所となります。
また、そもそも関税が発生しない物品もあります。これは「無税品」と呼ばれ、鉄鉱石、綿花、機械類などが無税品となります。無税品は関税率表に載っている分類全体の約36%を占めています。無税品以外の関税の発生する物品は「有税品」と呼ばれます。